読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ラブイズオンライン

つぶやき、料理、日記など

わたしの中のキッシュ

私がはじめて「キッシュ」という料理を食べたのは恋人の母親が作ってくれたものだった。私には持病があり、当時はそれが重くなったせいで仕事も生活もままならなくなっていて、けれど実の母親を呼ぶのが嫌だった私にどんな経緯を経たのかわからないけれど当時付き合っていた恋人の母親が手伝いに来てくれるということになったのだ。私は「赤の他人と過ごさなければならない」という唐突なプレッシャーと共に自身の健康も人生も、決して自分の思い通りにはならないんだということを思い知った。

その人が、数日目に自宅で作ったキッシュをタッパーに入れて私の家まで持ってきてくれた。私は使い込まれた質の良さそうなタッパーに面積少なく盛られていたキッシュを見て「これは何ぞや」と思った。キッシュはおかずなのかそれとも「ケーキ」「パイ」みたいなおまけ的なものなのかぱっと見分からなく、一汁三菜という和食のパターンだとどこに属するのかもよく分からない。わたしは混乱した。その彼氏の母親が帰ってから、一人の部屋で生まれて初めて食べたキッシュはとても美味しく、他の家ではこういうものを作ってくれる人がいるんだと思った。私の母親だったら私が遠い過去に一度だけ「美味しい」って言ったラフランスをいっぺえ持って来て、人の家で散々ガヤガヤしたあげくそのまま去っていくようなところがある。

私の実家は比較的保守的な家だったため、こういう外国っぽいおしゃれな料理はほとんど出なかったし、外食も一切しない家だったからハッピーセットが何たるかもよく知らなかったし風月にも高校生になってから初めて友達と一緒に行った。いつだったか私が「グラタンが食べたい」と言ったとき、母が作ってくれたのはシチューの上にチーズを乗せて焼いたものだったのを記憶している。当時小学生だった私はそれに喜び過ぎたせいで「好きなものを最後までとっておく」という貧乏くさい癖でそのグラタンをラップをかけたまま取っておいたのだ。夕方、友達が帰り、仕事を終えて帰って来た母親が手の付けられていないグラタンを見たときには当然すごく怒られた。「なんで食べてないの!!」と言われて、ただグラタンが嬉しかったから、、、という答える術すら持たなかった幼い私を思い出すとなんだか「切ない」と思ってしまう。私も、わたしんちも、どうしようもなくダサい。

初めて食べたグラタンには煮えていない玉ねぎとマカロニがたくさん入っていて、「こんなもんか」と思ったけどそれでも美味しくて嬉しかった。実家から出て一人暮らしをする前からわりと料理をする方だったと思う。それは今思うと家では食べられないものが多いからっていう理由だったのかもしれない。

 

とにかくそんな感じでキッシュはわたしの中に「少量しか食べられなかった、めずらしくて美味しいもの」として記憶されているのだった。

最近になって色々と調べてみたけどキッシュっていうもんはなかなか作るのが面倒くさそうである。まず、具の下に敷く小麦粉で出来た生地が必要で、それから生クリームも必要なのだ。ということは完璧に「ハレ」の料理である。予めこれを作ろうって決めてスーパーに行かなければならない。冷凍パイシートはそんなに安くもない。キッシュはわたしの中でいつも「先延ばし」にされている事案だった。いつか作る、いつか、いつか。

 

それを今回やっと作ってみました。私も冷凍パイシートを躊躇なく帰るくらいいつの間にか大人になっていました。

 

まず購入したのは

・冷凍パイシート

・生クリーム

です。あとは芋、冷凍のほうれん草はもともと買ってあったものを使った。よく考えてみると正確なキッシュはパイシートではなかったのかもしれない、、、。記憶の中のキッシュはサクサクしてなかったけど自分で作ったのはサクサクしていました。

f:id:tmtkkiy:20170309093926j:image

出来たのはこれです。見た目も華やか!

食べてみて、「うまーい!」と思った。卵、チーズ、クリームで出来た生地にしっとりしたパイ生地が合わさっておいしい。が、これをおかずとして他にも肉、それから副菜、ご飯を食べているとキッシュは5センチ四方も胃に入って来ないじゃありませんか。

そういえば、レシピの中に「牛乳と、生クリーム」って書いてあるものを、「せっかく生クリーム買って来たんだから」と全て生クリームに変え、自己判断で贅沢な「全生クリーム」キッシュを作ってしまったのだった。おまけにイモと、パイ生地。いくら美味しくても超高カロリーなものを一定以上、がんとして受け付けない胃に私はほとんど初めて直面して、面食らった。

こんなに手をかけ、金をかけたいかにも美味しそうなキッシュを3センチの立方体ぶん食べただけで、わたしはしばらくソファから起き上がれなくなってしまった。胃は、完全に「もうキッシュいらん!」と言っていた。

 

横になりながら私は過去の思い出までさかのぼり、やっと「あ!そうか!だからあの時のキッシュは少量だったのか!」と合点が行ったのでした。キッシュは少量でじゅうぶん。けどお母さんの愛情と「おもてなし」の精神がなみなみに注がれているおしゃれでかわいい料理です。